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【櫂三和?】形而上のサクリファイス、または形而下のスケープゴート

2015年10月08日
三和くんがなんらかのフシギパワーによって櫂くんのために作られた概念だったらいいなって思って書いたけど尻切れトンボ文章



 夢に見る場所がある。
 否、それはほんとうは夢ではなくて、いつか見た記憶の反芻なんだろう。根拠はないが、自分にとってとても大切なことなのだと何故か三和は分かっていた。
 信じるというよりは元から「そう」だと本能的に理解している。理由はない、ただそれが夢でないことが分かる。もちろん眠っている間に見るのだから夢だけれど、見ている光景は現実にあったことなのだ。だからそれは夢には見ていても夢の話ではない。

 そこはとても暗かった。ほとんど何も見えない場所だった。
 広さも奥行きも高さもよくわからない。ただ暗い場所ということしかわからなかった。そこで、声が聞こえた。問いかけてくるなにかが居た。暗くてどこにいるのか、どんな姿をしているのかは分からない。声だけが響いていた。
 「それ」は、彼に、三和タイシに尋ねた。その頃にはまだ三和には名前もなかった。けれど意思があった。ただ、存在しているという意識だけがあった。それはそんな三和に尋ねた。
 それでも、生まれる覚悟はあるのかと。
 その声はいつも奥底に響いている。生まれる前に聞いていた響き。三和タイシになる以前に聞いた音だ。

 だから三和は知っていた。その理由を、意味を理解していた。

 ――「生」まれる前からわかってた。


***
 カードが机の上に散らばっている。櫂トシキと井崎ユウタはそれぞれ少し離れた椅子に腰掛けて、各々のデッキの内容について吟味していた。放課後の部室に陽の光が差していてそこそこに明るく、部屋の電気はついていない。
 部屋には二人だけだ。いつもそれぞれ彼らの相方として傍にいるのが当然のようなあとの二人の姿は部屋になかった。それぞれ何か用事があるのだろうと、櫂と井崎は考える、もちろんお互いに自分の相方(と呼べるのだろう、一応)については何の用事でここに居ないのかは知っている。井崎は櫂に伝えようかと思ったが、彼がここに居ないうちの一人、森川カツミが居ない理由について知りたがるかどうか考えたあげく口をつぐんでしまった。

 井崎ユウタにとっての櫂トシキは友人と呼べるほど近くはなく知人と呼べるほど遠くない。では一体何なのかと問われると井崎本人にも、そして当の櫂トシキにも分からないのではないかという気がした。いちばん近い言葉をあてがうならおそらく「馴染み」とでもいうのだろうか。何しろ井崎は櫂とあまり話をしたことがない。こうして二人でいるのもごくごく珍しい状況であるし、取り立てて今何かしゃべろうという気にもならなかった。そもそも今井崎が何か世間話を口にしたところで、返ってくるのはせいぜい沈黙か良くて相槌だろう、けれど井崎には、櫂が自分の会話に相槌を打って聞いている様子はあまり現実的な想像ではなかった。
 ともあれ別に櫂と会話しないといけないという差し迫った事情もないので井崎は自分の手にしたカードと、長机の上に並べたカードを代わる代わる見てデッキの構築作業に励んだ。ファイトしてもらってもいいが、というか実際してもらえたら嬉しいが、どうなのだろう、彼は自分の相手をするつもりはあるだろうか。横目でちらりとみやる櫂トシキの横顔は端正に整っていて、天は二物も三物も与える事もあるんだなと井崎は内心溜息をつく。顔よし、成績よし、そしてヴァンガードは強い、とりあえずこれで三物は揃っている。代わりに不足しているものもあるのだろうけれども。

「なんでいつも一緒にいるんだ、アレと」
 唐突に、ぽつりと櫂が口を開いた。
 アレというのが何を指すのか、問い返さずとも井崎には分かる。前置としてかかっている文章が他でもないたった一名しか指していない。井崎ユウタがいつも一緒にいる存在といえばどこを探しても一人しか思い当たらなかったしそれくらいの自覚は井崎にもあった。
「アレって……そりゃ友達だからだけど」
 井崎の口から出たのは実に単純な一言で、それは彼の口から発される際に、まるで流れでるように実に自然に出てきたのだった。まるでそれ以外に何があるのだとでも言うように。櫂は小さく溜息をつく。
「聞き方を変える。なんであいつと友達やってるんだ」
「なんでって……友達やるのに理由なんかいるのか?」
 その返答に、何故か櫂は一瞬固まった。何故?自分で聞いておきながら、櫂は分からなくなった。友達に理由は必要なのだろうか。けれど友達が理由なく存在するなら、際限なく増えていってしまいはしないだろうか、たとえば彼の、そう、櫂トシキの傍にいつも一緒にいる、三和タイシのような性格ならば尚更。
 なぜ、井崎ユウタは森川カツミを選び、そして三和タイシは自分を選んでいるのか。
 そしてそれは立場を逆にしても言えることだ、何故森川カツミは井崎ユウタを選び、そして。

 櫂トシキは何故三和タイシを選んだのか?


***
 櫂の部屋に、というより家に三和が来るのはもはや恒例というか日常になりつつあった。最初は偶然から住居を発見され、その時はあまり良い心持ちがしなかった櫂だったが、実際に三和を家に上げて以降、そうした気持ちは徐々に薄れていき、今では櫂の部屋に三和が上がっていることで、どこか安心感を覚えるまでになっている。
 他人を家に上げることを考えていなかったので用意していなかったもの、たとえば折りたたみ式のテーブルや、来客用の食器や、それから今は三和用の小さなクッションも転がっている。そんなものを三和が来るたびに使ってくつろいでいるのを見ると、不思議な感覚が櫂を襲う。それはけして不快なものではなかったけれども。

 ガード、という言葉と共に差し出されるカードを櫂はぼんやりと見つめた。守護者のマークが光っている。それを見ながら、櫂は先程のやりとりを思い出した。

「強いて言うなら、幼馴染だったから……かなあ」

 友達と理由について思考のうちに黙りこんでしまった櫂に向かって井崎が発したのはそんな言葉だった。それは理由ではなく単なるきっかけではあるが、確かにこの場合きっかけは理由であり、理由はきっかけでもある。
 自分とは三和も幼馴染だ。だから自分たちは友達なのだろうか。では幼馴染ではなければ友達にはなっていなかったのか。そうしたら自分は一人だったのか、それともまた別の幼馴染がいたのか。考えだすときりがなかったし、考えていてもどうしようもないことのように櫂には思えた。
 いわゆる一期一会という言葉を櫂は知らないわけではない、袖振り合うも多生の縁とも言う。それは誰にとってそうなのだろう、井崎にとっても、櫂にとっても、例えば先導アイチにとっても、戸倉ミサキにとっても、葛木カムイにとってもだ。

「櫂? えっと、ガード……だけど、」
 どうしたと、三和がこちらを見て不思議そうに聞いた。
 理由なんてない、そうなのかもしれない。
「お前は、」
 きっかけは理由で、理由はきっかけだ。櫂にとっても三和にとっても、それはそういうものなのかもしれない。けれど聞いてみたかった。何故、お前は俺と一緒にいるのかと。
「なんで俺と一緒にいるんだ?」
「なんでって……さっき一緒に帰ってきて、お前ん家寄っていいかって聞いたらお前がいいぞって言ってくれたんじゃねーか」
 そういう意味ではない、が唐突すぎて伝わっていないようだった。違う、そうじゃないと一旦話をやり直す。何故お前は俺と友達をやっているんだ、と今度は丁寧に、誤解されないように櫂は言い直した。
 三和はぱちぱちと目をしばたくと、ううん、と小さく声を漏らして首を傾ける。なぜ、どうして友達をやっているのか、そんな事を聞く状況というのは一体どういう事態なのだろう。自分で聞いておいて今更櫂は変な事を聞いたような気がして、目を逸らしてしまった。
「特に理由はないか」
「いや」
 いきなり聞かれても答えづらい質問かもしれない。そう思ったが三和はすっぱりと否定した。理由がないわけではないことを即答していた。
「理由なら……あるよ」
 それから三和の方も少し目を逸らして、それから先の言葉は発されなかった。櫂はその理由を聞きたい、と思い目線を戻したが、三和はどこか遠くを見るような目をしていて、


 選ぶことはできたんだ、俺は強制されたわけじゃなかった。
 だって、何のために生きるかわからない人生より、何かのために生きる人生の方が俺はいいなって思ったから。

 この気持ちはこの気持ちを持つものにしか分からない。真実に三和の感情を理解するのは彼自身しか居ないだろう。
 つまり彼の感情は誰にも理解されることはない、けれど三和はそれを哀しいとは思わなかった。


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